ますい’s diary

子育てと趣味(自転車、酒、書評)など、書けたらいいな。

浜松餃子は二派にわかれるよ、という話

 浜松餃子が全国区となって久しいが、まだまだ浜松餃子に対する誤解があるゆえに、不幸が生まれていると感じている。
 その最たる原因は、浜松餃子には大きく分けて二派あるよ、ということが、浜松圏外には周知されていないことにある。浜松餃子と一括りにされているが、それぞれ全く違う傾向を持っており、違う料理と言っても過言ではない。
 その二派のうち、一派はメディアでもよく取り上げられている、皮が薄く、具はキャベツがメインのあっさり焼き餃子である。よくフライパンで丸く焼かれ、真ん中に茹でたもやしがトッピングされた絵が紹介される。こちらは、食べ飽きず、軽くパクパク食べられる餃子である。浜松周辺の家庭では、夕ご飯のおかずが餃子だけということも珍しくない。この系統は家で包むか、「丸和商店」で56個1,000円の生餃子を買って家で焼くことをおすすめする。というのも、この系統は食べ飽きない日常的な餃子であり、県外からわざわざ食べにくるべきグルメ的なものではないからだ。県外から浜松餃子を食べに来て、こっちの系統の店に入ってしまうと不幸が生まれる。浜松餃子って有名だけど、なんかフツーの餃子だった。あっさりしすぎて、なんか物足りないなどと。この系統のお店は地元の人が日常に食べに来るから愛される店なわけで、一発のインパクトを求める観光客には適していない。
 それに対し、もう一派は、皮が厚く、多めの湯で蒸すというよりかは茹でで、その後焼くというよりかは揚げる一派である。具はもう一派同じくキャベツメインで、肉感はないが、厚めの皮がパリッと焼き上げられており、餃子の大きさも一つが大きく、満足度が高い。県外から来るのであれば、こちらの系統のお店がおすすめだ。ちなみに私は、日常的にもこちらの系統のお店に通っていた。私のイメージする浜松餃子とは、この系統であったので、メディアに取り上げられる店が皮薄い派閥に傾倒していたので、疑問を感じていた。

 私の好きな派閥のお店としては、浜松駅に近い「福みつ」が一番観光客にっとては便利であろうか。私の一押しは天竜川駅の近くの「かどや」である。揚げ焼いた皮の厚い食べ応えのある餃子が味わえる。お好み焼きと焼きそばもあるので、グループで訪れてもよい。なお、ごはんはない。ビールで一杯やることをお勧めする。また、予約が必須で上級者向けだが「福来軒」もはずせない。餡の甘さも浜松餃子の一つの特徴であるが、ここはとびっきり甘い。そしてでかく、両面焼きと、いろいろ規格外であるが、うまい。持ち買って、冷めてもうまい。浜松餃子の一つの終着点といえるべき進化が味わえる。こちらも、ごはんはない。おいしい餃子屋にご飯がない則は、割と的中する。
 そして、今は閉店してしまったが「伊吹」という餃子屋も一つの極致であった。注文を受けてから、餡の水分を切り、皮に包み始める。フライパンは四角くスウェーデン鋼の特注物であると仰っていた。フライパンに火をつけ、餃子を並べ、多めのお湯でまず茹でる。ある程度茹でたら、湯を捨て、ラードで揚げる。ここもごはんがないお店なので、餃子で餃子を食べるが、一つ一つがしっかりとした餃子であり、満足度が高いのに、15個~20個は軽く食べてしまう。うまかった。店主はもともと大きな中華料理店に勤められていたようだが、いろいろ作るのが面倒で餃子に絞った、と煙草を吹かしながら回顧されていた。煙草もマイルドセブンを吸ったあと、フィルターを再利用してゴールデンバットに繋ぐなど、堂に入ったたしなみ方であった。このお店を見つけたのが、浜松を離れる直前であったので、数えるほどしか通えなかったのが残念である。私が浜松を離れてからも、時々はお邪魔させて頂いていたが、いつしかシャッターが閉じっぱなしになってしまった。
 さいごは、湿っぽい話になってしまったが、県外に引っ越してしまった今、浜松餃子が非常に恋しい。そもそもいま住んでいる三重県は、餃子屋というものがほぼない。中華料理店やラーメン屋に餃子はあっても、餃子だけを出す店がない。また、帰省した時は、餃子をたべよう。