ますい’s diary

子育てと趣味(自転車、酒、書評)など、書けたらいいな。

さわやかで敗北した話

 炭焼きレストランさわやかは、静岡県のローカルチェーンの代名詞となって久しいが、私も例にもれず、小さいころからさわやかのげんこつハンバーグを愛食してきた。外食と言えば、さわやか一択であり、さわやかと言えばげんこつハンバーグ一択である。もちろん、オニオンソース、ライスで。

 さわやかにおいては、オニオンソースとデミグラスソースの選択ができるが、議論の余地なく、オニオンソース一択である。これは、私の好みの問題ではなく、周知の事実である。地元民はみなオニオンソース派であり、デミグラスソースを選択するのは、下調べをせずに来た観光客ぐらいである。あるいは、10回に1回ぐらいたまにデミグラスソースにしてみようと移り気をし、やはりげんこつハンバーグにはオニオンソースだな、と確かめるためにあるものだ。

 そう確固たる信念をもって、私は20年来生きてきた。だが、転機は大学4年のころに起きた。大学生のときも、月に2,3回はさわやかに行っていた。その頃は私はオニオンソース原理主義者であり、げんこつ、オニオンソース、ライス、中身は赤い程度でokと、間髪入れず、オーダーする美学に酔っていた。あるいは、ランチや少し懐が寂しい時は、よくばりコンビもよく頼んだ。

 その日も、私は2,3人の友人と共に、さわやかでげんこつハンバーグ、オニオンソース、ライスを夕食にしていた。そこに、一人客がやってきた。一人さわやかとは、こやつも原理主義者だなと、一方的に仲間意識を感じていた。しかし、彼は「げんこつハンバーグ、デミクラスソース、パン」とオーダーした。デミグラス、パンだと、こいつトーシローか、と鼻で笑ったが、続く彼のオーダーに私は度肝を抜かれた。「赤ワイン、グラスで」。なん…だと。げんこつハンバーグ、デミグラスソース、パン、赤ワインだと、そうか、そうきたか…。その手があったか。さわやかで一杯とは、してやられた。私は彼を鼻で笑ったことを土下座したくなった。自分の未熟さが、ひどく恥ずかしかった。私は完璧に敗北した。

 その後、私はすぐに、彼を模倣した。その時も友人と一緒だったので、ボトルワインをオーダーした。さわやかで、デミグラスソース、ワインはありだと思います。赤ワインは安いチリワインで容赦なく冷やしてあるが、まぁ、ご愛敬である。なにより、げんこつハンバーグのまだ赤い部分の生肉と赤ワインは最高である。オニオンソースで白ワインでも良いだろう。また、さわやかでパンをいままでオーダーしてこなかったが、これまた後悔するほど、うまい。ちゃんと温めてくれてサーブしてくれる。いまでは、ランチ時やワインを飲まない時でも、ライスではなく、パンをオーダーするほど、さわやかのパンの虜となった。

 オニオンソース原理主義者のみなさん、さわやかで、デミグラス、パン、ワインという選択、一度を試しを。